平成最後のももクロコンサートに行ってきた
安い酒は翌朝に残る。
ももいろクローバーZ 春の一大事2019in黒部に2日間参戦してきた。水が良いから日本酒が美味しい。
ももクロのライブスケジュールにはその年の軸となる3回のライブがある。
夏の『バカ騒ぎ』
冬の『ももいろクリスマス』
そして『春の一大事』だ。
春の一大事は、2年前に元メンバー有安杏果さんがPR大使となった埼玉県富士見市での開催をきっかけに、
本来ライブ会場ではない地方都市を開催場所とし、その地域にお祭りのような町興し的一大事を巻き起こす、というコンセプトでライブが行われている。
「あなたの町で、2日間で3万人を県外から動員するイベントの場所を貸してくれませんか、経済効果ありますよ」という文句で開催されるライブイベントなのである。
今日はこの革新的なイベント体制を作り上げたももクロ運営の苦悩とアイデア、今回のライブが地方経済の活性化にどれほどの効果をもたらしたのかを検証し記事にする…なんてことはその分野の専門家の人とか、そろばんを習っていた人とか、そういう頭の良い人がやってほしい。
今日も私はただ推しの現場に行って好きだったこと、楽しかったものを無秩序に並べてダラダラと話したい。
ももクロ春の大箱ライブ、『春の一大事』が良かったので聞いてくれ見てくれ知ってくれ。
今年も春の一大事は2Days開催だ。
私は2日間とも参戦できたけれど、今日は主に初日の時間軸に沿って書いていく。
1.開演前
東京駅から新幹線でおよそ2時間半。
会場の最寄、黒部宇奈月駅に降り立った私は前日に興奮して眠れなくなり部屋の片付けなどを始めてしまい寝不足だった。
黒部宇奈月駅から会場となる宮野運動公園までは徒歩で1.5km。睡眠不足の東京不健康人間が辿り着けるわけがない。絶望だ。
しかし、駅から会場までの1.5kmには、およそ200mおきにももクロメンバーのイラストと「あと900m、ゆっくり行こうね」などとコメントの書かれた看板が設置されていた。ももクロのイラストが虚無の畦道を歩く私を優しく導いてくれるのだ。
イラストは決して精巧なものではなく、イラスト屋さんの素材を丁寧にしたくらいのものだ(失礼)。
しかし我らが推しアイドルももいろクローバーZは自らの纏う色だけでファンの寝不足による倦怠感など簡単に吹き飛ばす。絵で十分なのだ。
もしもここにももクロを好きじゃないのにこの記事を読んでくれている人がいたら、ももクロファンが特定の4色が並んでいるのを見るだけで興奮しているのを見てもそっとしておいてあげてほしい。
みんなも1000万円は大好きだと思うけど、
1000万円を構成する要素のたった0.1%を手に入れるだけでテンションが上がるだろう。
推しアイドルの担当カラーは推しを構成する要素のほんの0.1%でしかないかもしれないけど、私達はそこに1万円の喜びを感じ、現実の一万円をいとも簡単に支払ったりするのだ。
だからこの日も、私達は簡易な推しのイラストが書かれた看板に導かれるまま万里を歩く。
推しの絵を眺めながらこんなくだらない話をしていれば1.5kmなどあっという間だ。辿り着けない奴なんていないだろ。
2つに分かれた入場待機エリアでは、地元富山の名物B級グルメであるブラックラーメン、イノシシステーキ、富山カレーなどの屋台が出店され、場外特設ステージではお笑い芸人やアイドルのライブが行われている。
私はももクロライブのお祭りのような賑やかさが大好きだ(現実の祭りには殆ど行かない友達が少ないから)。コラボ商品を買いコラボメニューを貪る。
ちなみに今回のライブで販売されていたももクロ関連商品で一番好きだったのは「れにちゃんと握手した手でさばいたイノシシ肉」だ。くだらないし多分めちゃくちゃ売れたと思う。
さぁ腹を満たしトイレで用を足したら推しに会いに行こう。尿意と便意はスタンディングライブの敵だ。睡魔は死んだ。
2.開演
睡魔の亡骸を黒部の地に埋葬した私は少し時間を押した15時15分、無事に開演時間を迎える。
黒部市の紹介VTRの後、ステージには黒部市市長、東近江市市長、富士見市市長が登場し、オープニングセレモニーを執り行う。どうやら挨拶する歴代開催地の市長が開催ごとに増えていくシステムなので数十年後にはDay1の曲目は全て市長挨拶になる。
とかく「去年の開催地から今年の開催地にバトンをつなぐ」というセレモニーに一昨年の開催地、富士見市市長の星野氏が堂々登場して元気いっぱいの挨拶をはじめたのは笑ってしまった。これからも毎年来てくれ。
市長達がステージを降り、ももクロさん達のオープニング映像が流れだ後は恒例のOvertureだ。韻を踏むなら生後2ヶ月から高齢のお婆ちゃんまでぶち上がるももクロ登場曲。
オープニング映像の高城さんの笑顔の練習(「イチ、ニ、イチ、ニ」の声に合わせて2で両の人差し指を頬に当て首を傾げて笑う女神の所業)のかわいさの余韻に浸る暇も与えられず私達はももクロのライブの非日常に引き込まれる。
Overtureが終わり、息を飲んで本人の登場を待つ長い一瞬。曲がかかる。
「もしも、地球が回ることをやめたなら」
流れ始めた台詞は彼女達の声。しかしオケだ。
この曲は『イマジネーション』…!
私の心臓が大きくトクンと脈打つ。
振り付けかわいい歌詞かわいい歌声かわいいの3拍子揃った、ももクロのアイドル火力が最大に高められる曲。ももクロのアイドル曲だ。
アイドルはすごいんだ。みんなももクロでそれを感じてくれ。
側にいけばたちまち呼吸ができなくなる。
指先が触れ合うだけで空も飛べる。
どんな宇宙理論も軽々越えられる。
夢の中のPrinceに向かってそんなことを歌う曲中の姫は、目の前の推しアイドルを愛する私達に同期する。
会場にいた全てのおじさんは魔女の呪いが解けてプリンセスに戻っていく。
もう一度書く。ももクロのアイドルとしての火力を知りたければ『イマジネーション』だ。
ももクロ春の一大事2019はスタートした。
3曲目で歌った『吼えろ』も観てくれ。
この曲は全国の私にアンケートを取った「今、音源じゃなくライブを聴いてほしいももクロ曲ランキング」の第1位の一曲だ。
「ゆけ ゆけ 海を越えて 未来に届くまで 吼えろ」
イントロで百田さんが最後の「吼えろ」を力一杯にロングトーンしながら拳を突き上げる。この様があまりに格好良いことからこの曲は2018年以降のももクロライブの定番曲になりつつある。
この日は、全てのエネルギーを振り絞るように"吼える"百田さんの歌声が彼女自身の身体、そして突き上げた拳を震わせる姿がモニターに映ったのだけど、これが巻頭カラー見開き1ページ漫画すぎて私は死んだ。震えていたのは私だったのかもしれない。
「吼えろの歌い出しの百田夏菜子の拳」
これだけ覚えて帰ってほしい。
子供向けアニメエンディング曲として編曲されたことが惜しくなる良曲『HERO』は素晴らしかったし、『行く春来る春』は旋律の切なさと歌詞の日本語の美しさでライブの度に絶対に私の胸を締め付ける。
ちなみに『行く春来る春』では百田夏菜子大好きももクロこと玉井詩織さんが「アウトロで百田夏菜子に抱きつく」を都道府県ツアーで繰り返すことで既成事実を作りこの曲を「玉井詩織がアウトロで百田夏菜子に抱きつく曲」にした逸話があまりに有名。
そして一年ぶりに披露されたももクロの人気干され曲『チントンシャン』だ。
カップリング曲すらライブ定番曲にガンガン化けるももクロ楽曲群に度々現れる「人気なのに全然ライブでやらない曲」だ。
歌詞がバカでめっちゃ楽しいのでもっとやればいいのにと思う。
という語彙の貧しい感想しか出てこなくなるようなこの曲は、意味を考えずに楽しめるももクロ色の強い『バカ曲』だ。
考察も理解もいらない。
ライブでももクロが「チントンシャン」と歌ったらジャンプだ。
偏見も差別もいらない。
ももクロが歌って踊って、私達は一緒にジャンプするとそれだけで楽しくなる。
ちなみにこの曲で手足を広げてジャンプするももクロは全員めっちゃかわいいし姪にしてお小遣いを頻繁に払いたい。
お小遣いを払いたいといえば(話下手くそ)、地元地域の小学生と一緒に歌った仏桑花も無形文化遺産だった。
子供とももクロが一緒に歌う姿には明るい未来しか見えなくて眩しい。
仏桑花は、「旅立つ娘が両親への感謝を贈る歌」だ。
地元小学生を同伴した彼らのご両親は、彼らとももクロの合唱を聴いていつか訪れるそんな日に想いを馳せたのではないだろうか。
ステージの真ん中で歌う自分の娘、のように愛おしい自分の推し達を見守る、彼女達とは個人的な関係を一切持たないただのファンである私も、近い将来訪れるであろうそんな日を青空に描いて目を細める。
多くの子供達と一緒にこの歌が歌われることで、自分の推しを娘のように愛でて案じてしまう気持ちは何割り増しにもなった。
推しアイドルには絶対に幸せになってほしい。
推しもプロのアイドルである前にひとりの人間なので、どんな道を選んでもいいし間違えてもいいけど、最後には絶対に幸せになってほしいし、その輝かしい人生譚の1ページには私達の最高のアイドルであったことが描かれていてほしい。その背景を描くインクの一滴に私達がいられたら本望だ。
ライブの感想が推しの幸福を願う話にスライドしてしまうのはオタク語りで陥りがちな脱線だ、許してほしい。気がつけばセットリストの順番すら無視してる。
ももクロはMCもめっちゃ面白いしくだらない。
リーダーの広いおでこが眩しくて額を向けられた人が倒れる、という即興茶番に付き合わされる。楽しい。この日の百田さんステージの上ではしゃぎまくってて好きがニトログリセリンした。
あーりんの口が悪い。客席やメンバーに「うるせぇ!」とか普通に言う。あーりんの『口悪い』は言われた相手が傷つかない口調や雰囲気やタイミングで言うので面白いし、そんか口の悪いあーりんに必ず入る高城さんの「ステージ上だよ!」という、決して口の悪さをフォローしきらないツッコミに笑ってしまう。
高城さんは他のメンバーが喋ってる時に目に付いたファンにウィンクしたり投げキッスしたり見つめ続けたりするから観客席の奇声が止まらない。天使の笑顔で小悪魔の行い。
玉井さん「じおりぃぃぃぃ!!!!」みたいなダミ声が聞こえてないから最高。顔小さい足長いイケメン。2日目に普段サバサバとあしらいがちな高城さんに対して突然キスするものだからパニックになったし数万人が左胸を抑えて召された。ももクロで一番ジャニーズ。
ももクロは四人とも可愛格好良面白い。
四人の絶妙なバランスが織りなす音楽が鳴り響くももクロライブは美しく心を揺さぶる。で、アンコール後に一番観客席が盛り上がった曲がこの曲、『だってあーりんなんだもーん☆』だ。
ソロ!!
無秩序すぎる。ずるい強い。
この曲はももクロのリーサルウェポン。ラーメン界のニンニク。ラチェット&クランクのランチャーNo.8。三国志で言えば呂布。
平成に生まれた万のアイドル楽曲で最もライブが盛り上がる曲の一つだ。
しかもこの曲が『走れ!』とも『nerve』とも『初恋サイダー』とも異なるのは、カバー不能という点だ。
オーディエンスが呼気のほとんどを「あーりん!」で占めるこの曲は他の誰でもない佐々木彩夏御大にしか扱えないのだ。佐々木彩夏の『だてあり』はソーが振り回すムジョルニアなのだ。
雷神あーりんはこの日、突如富山県黒部市に降臨した。イントロを聴いた私達は「ここで!?(セトリ、場所二つの意味)」のパニックだった。
あーりんのムジョルニアは彼女の名前と同じ音の響きの落雷を会場中に落とす。
彼女が歌い、私達が「あーりん!!!」と叫んでるとそれだけて成立するソロ曲。これは王の楽曲である。ソーの稲妻という表現が誇張ではないほど超絶盛り上がる。
ちなみに4人で歌ってたのに突如あーりんのソロ曲が始まるものだから残りのメンバー3人が「おかしいだろ!!」と野次を飛ばすものの後半は歌うあーりんに紙吹雪を降らせたりして脇役に徹するようにさせられてたのも笑ってしまった。
その後、最後の『コノウタ』『Guns N' Diamond』はももクロバンドのバンドマスターでありキーボード担当である宗本康兵氏のキーボードアレンジ(であってる?)で披露されて超オシャレだった。『Guns N' Diamond』は本当にももクロ曲の中でもトップクラスにダークで格好いいので絶対に聴いてくれ。
3.終演
4人が挨拶をはじめればいよいよライブが終わってしまう。
百田さんが「久しぶりに(ファンのみんなに)会う感じがして『おぉ久しぶりー!』みたいな気持ちになった」と話していた。
先に書いたけど、この日の百田さん本当に遊びにきた人みたいに楽しそうにライブするので本当にキラキラしておった(突然の老い)。
そして百田さんは県外から遠征してきたファンに対して「みんなで『ライブ以外は自由行動』っていう旅行してるみたいで良いですよね」とか話してて、物の見方が素敵過ぎて完全に惚れた(数億回目)。
しかしながら一頻りの寂しさを抱えながら4人の挨拶を聞いていると、彼女達がいかに「人に笑顔を与える」ということを自分たちのアイドルとしての活動理念にしているのかが言葉の端々から伝わってくる。彼女達は本気で『笑顔』で多くの人々の幸福を成そうとしてる。
大義的な話をすると重くなるのでやめておこう。とにかくももクロのライブはめちゃくちゃ笑ったし楽しかった。これはこの後、平成が終わろうとゴールデンウィークが明けようと私が寝不足だろうと無関係なのだ。
春の一大事はこれからもきっとこの地方巡業スタイルを続けていく。
ももクロを追いかけたので私にとって富山県は、最高に楽しいももクロライブの後に美味しい日本酒をたらふく飲んだ楽しい思い出のある土地になった。推しに会った余韻で酒を飲むと悪酔いしない。これ豆な。
良いライブは数年経っても残る。
あと、良い曲というのは何年経っても残るので、最後に最近公開されたももクロの良い曲を観て帰ってくれ。
The Diamond Four / ももいろクローバーZ