とっくに狂ってる

ももいろクローバーZを追いかけ、匿名性に寄りかかりながらたまに書く。

私たちはずっと魔女見習いでいい

推しの百田夏菜子さんが声優をやるというので、映画『魔女見習いを探して』を観た。

私の推しはももいろクローバーZのリーダー百田夏菜子さんだ。いい声優でもあるのでぜひチェックしてほしい。

 

私はおジャ魔女どれみを"通って"いない。

メインキャラクターのビジュアルと、名前を言われれば、まぁおおよそどの子のことかわかる、というレベルの認知。

なので、おジャ魔女を愛してきた人々だけが味わえるノスタルジーや感動を100%味わうことはできなかっただろう。

それでも本当に良かったのでこんな感想文までしたためてしまった。

観ようか悩んでいる人は読んで、観てほしい。

あとももクロオタクは百田さんの可愛すぎる方言が聴けるので、以下の文章を読むまでもなく耳かっぽじって劇場へ行ってくれ。

 

 

 

 

以下、ネタバレを多分に含みます。

本編を観る意欲が削がれないように書くけど何にも責任は持てないので悪しからず。

 

 

 

 

 

この物語は幼少期をおジャ魔女に魅せられた3人の女性が、おジャ魔女を通じて出会い、旅と酒を通じてそれぞれの人生に影響を与え合うオタク旅ドラマだ。

 

旅と酒。ふざけているのではなく本当に、旅と酒。旅をする3人がそれはもうめちゃくちゃ飲酒する。

しかしこれはよくできていて、作中での度重なる飲酒の登場(そんな言葉はない)は、この物語の主人公が『あの頃の彼女達』ではなく『大人になった今の彼女達』であることを否が応でも私達に飲み込ませる。

おジャ魔女本編を観なくてもわかるのだけど、昼間の新幹線で「今日は自分を甘やかそ〜」と言いながら缶ビールを開ける大人はおジャ魔女の世界には絶対に登場しない。

 

おジャ魔女の聖地(?)で偶然出会った3人は、

エリート商社で差別的な扱いを受け仕事が思うようにいかないだとか、

教員になるつもりで進学したけど心が折れ自分の気持ちに揺れていたりだとか、

働かないバンドマンを彼氏にしてしまい将来が見えていないだとか、

それぞれがファンタジーの世界には一つも存在しない大人の悩みを抱えている。

ちなみに私の推しの声は働かないバンドマンに惚れていた。考え直してくれ。

 

そんな冒頭から始まるこの映画の何が良くて信頼できたかというと、これら3人が抱えたいくつかの悩みを全部真っ向から克服してハッピーエンドにしたりしないところ。もうこれに尽きる。

会いたい人との再会が希望通りに運ばなかったり、自分のモチベーションを省みたり、そもそもやりたい事を考え直してみたり、問題解決の結末も現実的で大人。

 

「初対面背負い投げ」や「辞表茶」といったアニメならではの解決策(?)も登場する。美味しそうなお酒が沢山出てくるけど私は辞表茶が一番好き(本編を見てくれ)。

様々な作品で見受けられる『全体的には好きな作品なのに主人公達のポジティブハラスメントでなーんか萎えちゃう症候群』を持つ人にもおすすめ。

 

 

そしてちなみに

「推しの聖地で出会って偶々仲良くなって聖地巡り、そんなことあるわけないでしょ」

と思ってるあなたは健全。明日のラッキーアイテムは1000万円。

 

でも実はそんなことめちゃくちゃあります。

オタクには偶然出会った同種のオタクに対し常人には聞こえない速度の早口で交信を行い、仲間だと認識するとあっという間に群れを作る性質を持つ種が確かに実在します(早口)。

 

オタクはもう3人の出会いから頷きながら見ていたよ。

しかもその後に新幹線で偶然知り合うおジャ魔女オタクの大学生男子との一旅の恋騒動では

「すぐに距離感が縮まる人見知りゼロオタク、SNSやばいがち」というオタクあるあるまで見事に再現されている。

 

思い出、という綺麗なものを扱うだけでなく、ちゃんと大人になってもコンテンツを愛するオタクを描いているから安心感があるんだこの映画は。

 

そして物語終盤。

彼女達3人は、時にお互いの時におジャ魔女を信じるチカラを借りながら自分の生き方を見つめ直していく中で

「誰もが魔法を持っている」

という気付きを得る。

 

絵が上手く書けること、はそうでない人にとっては魔法であり、思いやりを持っていることはそうでない人にとってまた魔法である。という気付き。

これは本編のおジャ魔女どれみで同じ事を言われても大人には刺さりづらい道理だったと振り返って思う。

年齢も住まいも環境もまるで違う3人の女性を引き合わせた只のアニメコンテンツの存在が、大人になった彼女達の手にはなかったはずの魔法の存在に説得力を与えている。

 

幼少期に夢をくれた大好きな物語とキャラクター達が大人になった自分達に再び、思いもよらない出会いやチカラをくれる。

そんな救いが彼女達が生きる大人の現実の中に描かれているからこそ、魔法という綺麗すぎる言葉がスッと胸に入ってくる。

 

 

そして全編を観終えて思う。

この物語に救われるのはおジャ魔女ファンだけではない。

 

この物語は幼い頃に憧れ、恋焦がれ、けれどいつしか現実に染まった私達が押し入れの奥底にしまいこんでいた全てのファンタジーの存在を現実的に肯定してくれているのだ。

 

例えば私は偶々出演者である百田さん及びももいろクローバーZのオタクだ。そして私は推しのアイドルにファンタジーを見ている。

私にとって百田さんはディズニープリンセスであり、少年漫画の主人公だ。シンデレラでありモンキーDルフィなのだ。

 

私は今でも幼少期に魅入ったファンタジーの実在を自分達の推しに写し、信じてやまない。

それは大人である私の原動力、支えになっている。明日の朝、目を覚ます理由をくれている。

そんな信奉と依存を持つ人が、暮らしに推しを携えて生きている人々の中に私調べで5000万人はいる。

 

あの頃私達の胸を躍らせ目頭を熱くさせた八百万のファンタジーは、今でも私達のモチベーションになり、力になり、指針になっている。

そんな構造を全面的に肯定してくれる優しくて綺麗な物語なのだ。

 

そうこれは幼少期に見たファンタジーに自分の好きのルーツを持つ全ての大人が観るべきオタクロードムービーだ。

 

あとオタク関係なく、旅行して酒飲みたくなる映画です、おすすめ。

 

 

※この記事はオタクの早口感想を文字起こしするという魔法を使って書きました。